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世界銀行防災室(Disaster Management Facility: DMF)
及び防災関連プロジェクトについて
 


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1.DMFの概要

世界銀行DMF (防災室:Disaster Management Facility)は、自然災害発生時により戦略的かつ迅速な対応を図り、すべての世銀の業務において防災の観点を加える、という目的で1998年6月に設立された。これには途上国の災害が人的損害で先進国の最大100倍、GDP比で最大20倍にも達し、持続可能な開発の大きな障害になっているという背景がある。

具体の目標として次の点があげられている。

1) 災害頻発地域において防災体制を強化し、自然災害に脆弱な状況を改善する。
2) 効果的な防災プログラムを組み込んだ持続可能なプロジェクトや活動を推進する。
3) 世銀の通常業務や分析、国別援助方針においてリスク分析や防災プログラムを含めるべく活動する。
4) 防災分野でのトレーニングを行う。
5) ハード対策、ソフト対策、コミュニティ防災、民間セクターとの協調を通じて、自然災害軽減を目的とする政策、組織、事業を推進する。
主な活動としては、

・防災投資への市場イニシアティブ(MIMI):保険業界と世銀の資源をリスク削減のためパートナーシップで結び付けるもの。
・被援助国及び世銀職員への支援:ブラジル森林火災、トルコ地震洪水復興、インド地震復興、カリブハリケーン防災、中米防災、メキシコ防災、エルニーニョ防災等の案件にて支援を行ってきた。
・国際、研究機関とのパートナーシップ:関係機関との協調を図る。
・世銀案件の評価
・世銀の政策(Operational Policy OP8.5)の修正
・啓発活動
・トレーニングコースの実施

1999年6月には「地球防災への検討グループ(CGGDR:Consultative Group for Global Disaster Reduction)」準備会合が、防災は持続可能な発展に向けての重要な要素として優先されるべきで、関係者の協調した取り組みが求められるとの認識により開催された(主要議題は表)。これには関係国際機関、政府、援助機関、NGO、研究機関が参加した。
この準備会合を受け、自然・技術災害検討会(NAT-CAT Consortium for Natural and Technical Catastrophes)が設立されることとなった。
主要な活動分野は以下の4点である。

1) ドナー間調整及び防災政策推進
2) 脆弱性を減らすための啓発活動を通じて「安全文化」を形成する
3) 官ー民、研究ー政策間のつながりを強化する
4) リスク軽減のパイロットプロジェクトを支援する

優先課題は以下の通りであり、防災プロジェクトも「貧困」、「環境」という最近の援助の2大キーワードから理論の再構築が図られているのがわかる。

@貧困と脆弱性:貧困は災害の脆弱性に密接に関連しているが、その関連性を分析し貧困層の脆弱性を軽減する戦略を策定する。

A防災と環境:災害軽減に貢献する生態系(森林、マングローブ林、さんご礁等)の保全を図る。

Bフォーマルとインフォーマルセクター間でのリスク分担、転換メカニズム:貧困層へのリスク削減戦略、保険メカニズム、セーフティネットの優先

表:CGGDRでの主要議題

@開発における災害の影響:災害は開発を数十年遅らせかね

ない。また、環境破壊と密接に関連しているという視点から

防災を捕らえる。

A貧困軽減に向けての防災:災害と密接に関連する貧困を軽

減するための優先分野として、防災を考える。

B被害軽減に向けた民間セクターの役割:リスク削減に向け

た保険制度の活用。

C貧困層保護の戦略:特に災害から貧困層を守るための方策

Dリスクを市場メカニズムに組み込む。

E防災投資へのインセンティブとリスク管理

F災害リスクの分析:災害の予測、予報を行うための検討。

Gコミュニティ防災:地域が持つ特性を生かした防災を行う

H災害の発生を防災に向けての契機とする。

2.世銀の防災関連プロジェクトからみる教訓   

2ー1 概要

DMFでは1980年以来の198の防災関連プロジェクトについて分析し、その教訓を取りまとめている。

1)復興援助(被災後)

緊急復旧援助は多くの世銀職員にとって基本的かつ伝統的な役割といまだにみなされている。102の復興援助プロジェクトのうち緊急復旧援助は70(全体の68%)を占め、金額も75億ドル(9、000億円)のうち51億ドル(6、100億円)を占める。これまで56カ国に広く供与してきており、対象とした災害では風水害(54%)、干ばつ(17%)で71%を占める。通常、複数のセクターにまたがっており、都市部が中心であったが、農村部でも行われるようになってきている。中でもインフラ施設やコミュニティ施設の復旧、緊急輸入支援を通じた経済復興に重点を置いている。また、制度改革は重要なプロジェクトの要素として支援されている。

完了したプロジェクトのうち79.3%は初期の目的を満足したと評価されている。プロジェクトの規模では、小さいほど満足度が高い。評価における重要な教訓としては

@迅速な対応が最重要、A災害を繰り返さないよう災害防止事業が常に含まれるべき、B調達に柔軟性を持つべき、Cコミュニティの参加が重要、D単純なプロジェクトが優れている、E制度改革が重要、F専属の復興担当部局が設立され、ドナーやNGOとの調整が行われ、中期的な対策に注意が払われなければならない。

2)防災援助(被災前)

今日では世銀と途上国においては、被災する前に被害軽減のための防災事業を行う必要性につき認識が高まりつつある。このためプロジェクト数も80年代の40から90年代には55に増えている。全体で96プロジェクト、65億ドル(7、800億円)の支援が1980年以来行われてきた。ブラジル、中国、バングラディシュ、インドが四大受取り国であり40%を占める。主要分野は洪水(32%海岸保全、治山も含む)、森林火災(32%)、干ばつ(29%)である。こうした防災援助を受けている国は復興援助を受けているケースが少なく、これは、予防的事業が有効である一つの証と考えられる。

制度改革は啓発、計画、予警報等においてきわめて重要である。実効性には問題が見られることもあるものの、土地利用、建築基準、規制への支援は危険地での居住や災害に弱い構造を避けるために広く行われている。

全体の81%が目的を満足したと評価されている。大きなプロジェクトほど成功しており、これは規模が多くなるほど準備に時間をかけるためと考えられる。評価における教訓としては、

@適切なプロジェクトの計画が重要、A維持管理について常に確認しておく必要がある、B制度改革には政府の意思表示と決意が必要。制度改革とソフト対策はプロジェクトの中核に組み込まれる必要がある。

3)これまでの経験から導かれる優先課題

@ 持続可能な発展のため自然災害の被害を軽減する

災害頻発国では持続可能な発展に向けた政策は、災害による直接、間接、二次被害の軽減を目的とすべき。直接被害は構造物の損害を、間接被害は生産活動への影響を、二次被害は開発計画や予算、収支への影響等を含める。

A 被害と被害ポテンシャルの評価

政府は開発予算と計画の中に被害ポテンシャルを要素として組み込む必要がある。危険性、脆弱性評価からなる災害リスク分析は重要かつ基本的な活動である。また、災害発生直後には正確な被害を評価する必要がある。

B コスト・便益評価

コスト・便益の比較は常に行われるべきもので、プロジェクトの便益を受ける住民は何らかの形で費用を負担すべき。

 

C 開発計画に防災を組み込む

自然災害と発展の関係は良く理解されているとは言いがたい。更なる研究が必要であり、国別援助戦略にて災害につき記述される必要がある。

D 効果的な復興のためにスピード、調整、参加を組み込む

迅速、効率的な手続きが必要であり、関係省庁、援助国、NGO間の効率的な調整が行われるべきである。また、復興プロジェクトを成功させるには被災コミュニティが関与しなければならない。

E 市場経済に基づく

ソフト、ハード対策の双方において実質的に経済的な便益をもたらさなければならない。

F インセンティブを与える

防災は財政的に実施可能なもので経済的な効率性が求められる。ただし、投資の防災的な効果を犠牲にしてはいけない。プロジェクトの便益を受ける住民が部分的にでもコストを負担するよう働きかけることや民間投資へのインセンティブが与えられるべきである。しかしながら、貧困層に対してはセイフティネットが与えられるべきである。

G プロジェクトの計画に防災を組み込む

プロジェクトの計画において次の点を検討すべき:@定常的な業務としての防災、Aプロセスや計画としての防災、B通常の維持管理としての防災、C最善の実施の一部としての防災

H 誰が払うのか?コストの分担とコストの回収

防災を開発援助の中心に据えるためには、コストの分担や回収を中心に考えるべきである。

I リスクの転換と財政支援

民間保険は重要な役割をになうが、発展途上国の市場においては一般的でない。世銀はより積極的な支援を行うべきである。

 

 

2ー2 「世銀の教訓」にみる日本の防災ODAへの教訓

この世銀の教訓は日本のODAにおいても参考にすべき点が多々あると考えられる。我が国のODA防災プロジェクトは、堤防建設等の治水の予防事業を中心に行われている。一般的に途上国においては災害発生後の救援が中心となり、なかなか資金が回りにくい予防事業を長年にわたり支援してきたことは高く評価できるものの、今後の課題としては、

・災害復旧への迅速かつタイムリーな対応:世銀が被災の数ヶ月後から求められるインフラ復興に対して、緊急復旧援助を中心の活動として行っているのに比べ、我が国では通常の有償資金協力や無償資金協力を活用した迅速かつタイムリーな本格的な支援はほとんど行われておらず、緊急援助隊や、緊急無償資金協力による最大数億円規模の機材供与のみである。スキームとしてできないというわけではなく、例えば、アジアの経済危機においては膨大な額による緊急的な支援が繰り返し行われてきた。災害復旧においても世銀の手法を見習いつつ人道的な観点から迅速な対応が求められる。

・地域的な偏り:これまで多くの事業はインドネシアを中心に行われてきた。日本と関わりの深い他の東南アジアや南アジア各国においても積極的な支援を行っていくべきである。特に、世銀の防災援助の4大受取り国であり、防災プロジェクトへのニーズが高いと思われる、ブラジル、インド、中国、バングラディシュに対してはこれまでほとんど援助が行われていない。こうした、ニーズの高い国との政策対話を行いつつ支援していくことが求められる。

・ソフト対策、コミュニティ防災、制度改革の重視:これまでは構造物建設の援助が中心であったが、世銀が教訓としているように、プロジェクトの持続性を確保し、援助効果を上げ、質の高いプロジェクトとするためには、ソフト対策や組織強化、改革をプロジェクトに含める必要がある。

参考文献

 

Gilbert R., Kreimer A.(1999)  Learning from the World Bank's Experience of Natural Disaster Related Assisrance

                                        

石渡幹夫(1997) コミュニティと防災援助ー参加型アプローチの適用を中心としてー「開発援助研究」Vol.4 No3

 

DMFホームページは

http://www.worldbank.org/html/fpd/urban/dis_man/dis_man.htm.

 

 




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